エージェントテクノロジー最前線
まえがき
エージェントテクノロジーは、私たちのとても近い未来に大きくかかわってくると思われる、無限の可能性を秘めた技術です。本書はその技術をさまざまな応用の観点から解説しています。もちろん、すべての応用範囲をカバーしているわけではありませんが、この分野に関心のある読者に多くのインスピレーションを与えてくれることでしょう。
エージェントテクノロジーに関する本は、現在、本書以外にもさまざまなものが存在します。それらには、基本となる技術の詳細を含むもの、エージェントによってもたらされる未来の一端を概観しているもの、オブジェクト指向の延長としてプログラミングを中心に論じているもの、インターネットにおける検索技術や通信技術の一部として論じているものなどが含まれます。本書はその中のいずれとも異なりますが、むろん共通部分もあります。本書には、さまざまな応用分野や可能性を一気に論じようとして欲張っている感じもあります。しかし本書は、エージェント技術をより具体的な形で役に立たせようと努力している研究者が、みずからの経験と知見に基づいた、聞きかじりではないリアルな内容を読者に提供しようと意図して書かれています。
本書では、目次を読んだときに各章の観点がわかりやすくなるように、それぞれの章の最初の節のタイトルを「エージェントは○○する」という形式で統一しています。それによって、読者がエージェント技術の持つ可能性を直感的に認識して、より深い興味を持って読み進んでいただけることを期待します。
本書はコンピュータサイエンス誌bitの1999年2月号から8月号までに連載された「最新エージェントテクノロジー」に加筆・修正を加えて再編集したものです。連載終了から本書の出版までずいぶん時間がかかってしまいましたが、この本をできるだけよい形で出そうという気持ちによるものですので、ご容赦いただきたいと思います(もちろん、理由はそれだけではないのですが)。
本書は3部構成(ただし、第1章を除く)で、全10章からなっています。それぞれのタイトルと執筆者は次の通りです。
-
第1章 概要と展望(長尾 確)
-
第1部 知的ソフトウェアエージェント
-
第2部 知的モバイルエージェント
-
第3部 コミュニティウェア